ビジネスの結果が変わるN1分析 実在する1人の顧客の徹底理解から新しい価値を創造する Part.4
第3章 実践N1分析 ケーススタディから抽出するN1分析のポイント
「顧客起点」と「帰納的発想」
「具体的に実在する1人」がすべての起点になる
「実際にいる誰か1人が、絶対に欲しいと思うもの」からWHOとWHATの組み合わせを見つけ、それを訴求するために効果的なHOWを打ち出す。そして、顧客の数を段階的に増やしていく。これが「N1分析」によるマーケティングの基本的な考え方です。
- 上記の対極が、「マス競争モデル」
マーケットが縮小する時代の勝ち筋は「帰納的発想」
独自の便益がないままマス競争を続けているプロダクトは必ず価格競争に巻き込まれ、コモディティ化します。
- 便益、独自性を見つけるために有益なのは、帰納的アプローチ(N1)によるマーケティング
- ただし、演繹的発想を使わないというわけではない
- 帰納的なN1分析だけの提案では、突飛に思われて組織を動かすのはむずかしい、市場全体でそのN1がどのようなポテンシャルを持ち、新しいセグメントを形成する可能性があるかを演繹的に説明できるようにする
まず「ロイヤル顧客」に話を聞く
ビジネスで最優先に考えるのは「誰に(WHO)」「何を(WHAT)」を提案し、どんな価値をつくるか
「顧客は誰か」からビジネスははじまる

利益のカギを握るのは「ロイヤル顧客」
- 新規顧客獲得のコストはリピーターの維持するコストの5倍 「1:5の法則」
売上向上のために新規顧客の獲得ばかりに注力していると既存顧客を重視していれば得られたはずの高い利益性とその累計利益を毀損していきます。
継続的に利益が上がる仕組み
企業が考えるべきポイントは次の3つです。
1. ロイヤル顧客がずっと購入し続けてくださるためには何を提案したらいいのか(WHO&WHAT) 2. 一般顧客をロイヤル化するためには何を提案したらいいのか(WHO&WHAT) 3.ロイヤル化しそうな新規顧客を獲得するためには何を提案したらいいのか(WHO&WHAT)
「外れ値」に注目すると、商品開発の新しい切り口が見つかることも
- ロイヤル顧客20人に「価値を感じている部分」の話しを聞いていくと、重複する答えが出てきて、たいていは3~5つのパターンに集約される
- その中には、特殊で例外的と感じるような話もでてくる
- 一見すれば外れ値に見える便益を感じている顧客の心理と行動の理解を深めていくことで、新たな便益を見つけ出す
大きなチャンスは常識の「外」にある
- 企業が考えている常識の外側にお客様を動かせるヒントがある
- 事業が成長しないと悩んでいるときは、そもそも自分たちの考えや予想の範疇が狭いということを意識する必要がある
- N1インタビュー中に「お客様が何か変わったことを言っているな」と感じるときは、本筋から脱線してでも「それはどういうことですか?」と深堀りしていくと新しいアイデアにつながる可能性が高い
「N1インタビュー」の実践
20人くらいにインタビューをすると、アイデアが見えてくる
- N1インタビューは、1時間くらいを目処(カジュアルに5分、30分というケースもある)
- 数の多さよりも深さが大事
- ロイヤル顧客が20人も見つからない場合、10人でも5人でも
ロイヤル顧客で得られたアイデアを元に、仮説を考え、ほかの方へのインタビューの際に「こういう提案があったらどうですか?」などを聞いて、複数の人から好意的な反応があれば、大きなリターンが見込める可能性が出てくる
逆に、ロイヤル顧客を深堀りした際に特殊な要因を見つけられず、一般顧客の方たちと便益と独自性が同じ場合は危険な兆候
- お付き合いや商品を変更するのが面倒だから続けているだけ
N1インタビューの大きな流れ
- インタビューの「目的」と「仮説」を立てる
- 「仮説」をもとに、特定の顧客の行動と心理を深く掘り下げる
- 新しい「仮説」を考え続けながらインタビューする
- 1人にインタビューした後、ブリーフィングやデブリーフィングなどでレビューを行う
N1インタビューに欠かせないのは「目的意識
- お客様の気持を知ることができて勉強になりましたでは終わるのは意味がない
- アクションに繋げられるというのは、仮説を精度高く構築できるようになる
N1インタビューの「目的」は、人間理解の先にある「アイデア=事業成長のための具体的な提案内容」を見つけることなのです。
- なんとなくのインタビューで、なんとなくお客様を理解するのではなく、この人が絶対に離れなくなるアイデアとなる便益と独自性を見つけ出すためにインタビューを行っていると目的意識を明確にもつ
N1インタビューでは「4W1H」で深堀りする
- お客様の「認知」「購入」「使用」に関わる行動や思考、感情について詳しく聞く

お客様に「便益」を聞かない理由
- お客様にとって便益は何かと聞いても、たいていはお客様自信はわからない
- さまざまな角度から細かく質問しながらこちらが、洞察して「便益」を見つけ出すもの
- 使う前とあとでの変化
- 競合と比較して、こちらを選んだ理由
- 独自性も直接「何が独自性だと思うか?」と聞くのではなく、「あの商品ではなく、この商品は何が違うのですか?」という質問の方が効果的
- N1インタビューの前提として、行動の変化につながる心理の変化はお客様自身は意識していないということ
「N1インタビュー」では、どのようなアイデア(便益と独自性の組み合わせ)が、どのような環境下で評価され、お客様の行動を左右しているのかを考えながら話を聞くことが重要です。
押さえるべきは、お客様の心が動いた「強い瞬間」と「変化」

顧客が「認知」から「購入」、そして「ロイヤル化」までをどのような道筋を通ってきたかを示す「カスタマージャーニー」を作成しながら、行動の変化を時系列で整理し、行動に変化を与えた「心動いたポイント」を見つけることが重要です。

「仮説」から「戦略」へ、「戦略」から「施策へ」
- N1インタビューをすれば必ずお客様が明確なアイデアを語るわけではない
- 顧客理解の解像度を高め、ロイヤル化にいたる「アイデアのヒント」を得る手段
- インタビューを通して、購入行動を心理的に深く掘り下げるためには、事前に「仮説」の準備が必要
- インタビューで得たヒントを考察しながら、仮説案の精度を高め「WHOとWHAT」にし、その後LTVの最大化に向けたWHOとWHATを結びつける具体的な施策(HOW)を検討する
- 注意点としては、仮説は必要だが、企業・マーケター側の思い込みをたしかめるインタビューにはしないこと
- はじめのうちは、精度が粗くとも演繹的にデータから仮説を作っていき、インタビューを続ける中で顧客理解を深め、仮説の精度もあげていくことが大事
マーケティングの「アイデア」抽出
「インサイト(潜在ニーズ)」と「アイデア」
「N1インタビュー」からお客様が感じている便益と独自性を見出すためには、「お客様自身が気づいていない潜在的なニーズ(インサイト)」を洞察する必要があります。
インサイトの発見は難しい、深層心理の欲望や欲求、ニーズなど本人も意識していない心理が行動に影響を与えている
実際の人間の行動はそれほど複雑ではなく、無意識的にサービスやモノを購入している、その行動パターン自体はそれほど多くない
お客様の言葉の端々から無意識に望んでいらっしゃることを推察しながら話を聞くため には、何度もインタビューと分析を繰り返し、経験を積むことが求められます。 ふとした顔の表情や話し方、話している内容の矛盾、脈絡のない文脈から出てきた言葉、話しているときの仕草、その人の着ている洋服や持ち物など、さまざまなところから、「この人は本当は何を求めていて、どういったことに悩みを感じていて、心底欲しいと思っているものは何だろう。どうしたら、この人は喜んでくれるだろう」ということを常に考えけて、頭の中で仮説検証をしていくしかありません。
そして「N1インタビュー」を重ねながら、「違った」「これじゃない」といった失敗を繰り返していくうちに、「あ、これだ!」とお客様が求めているものを見つけられるようになっていきます。試行錯誤を重ねることで、お客様の心理を洞察する力や理解する力が少しずつ身についていくのです。
レビューと振り返り
- 傍聴者や参加者全員でブリーフィングなどでレビューを行う
- どんな人だったのか
- お客様の驚きや喜びなど心が動いたポイントは何だったのか
- 想定外だった出来事は何か
- 新しい気付きや発見はあったか
- 共通項だけでなく「外れ値」や「異常値」に着目することも重要
- お客様の潜在ニースを汲み取り、「WHO(顧客像)」「WHAT(便益と独自性)」を整理していく
- その後、顧客戦略に向けた再現性のある施策「HOW」を考える
高速でPDCAを回しながら「勝ち筋」を見つける
- N1インタビューでWHOとWHATのアイデアが複数見えてきたら、小さなテストを行いコストに見合うだけの顧客の反応があるか、検証をする

- 常に「WHOとWHAT」の仮説を作って、小規模テストする一方で、次の「WHOとWHAT」の仮説をつくり、それもまた小さくテストして検証していくプロセスを実施する
「顧客起点」が事業を成長させる
「N1分析」を事業担当者や責任者が行うべき理由
事業責任者や経営トップがお客様の理解に努めなければ、事業は成長しにくいということです。お客様の理解を共有していない経営者や事業責任者からすると、どんなに素晴らしいアイデアやヒントを部下や現場が見つけても、それらは、奇抜で、的外れで、非常識にしか見えないので、新しい可能性を否定することになります。
- お客様の理解が、組織を貫く「横串」になる
縦割り組織で部門ごとの連携がない、そういった部署間をつなぐものは「顧客理解」であるべき
まずは少しづつでもお客様に会うための時間をとることが大切
全権を掌握しているつもりで「N1分析」を行う
意識だけでも全権を掌握しているつもりで「N1分析」を行うことです。「N1分析」において、この視点の切り替えは大事なポイントです。
「N1分析」をされる際には、プロダクト単体やマーケティングの施策だけに目を向けるのではなく、ぜひ事業や経営全体を含めた視点を持って進めてみてください。
N1分析の敵は「過去の成功体験」や「社内の常識」
- N1分析の進めるうえでの障害は、過去の成功例やこれまでの常識にあてはめて考えるという演繹的アプローチ
常識というのは、過去の成功から導き出された思考や判断の習慣に過ぎません。したがって、永遠に通用する常識など存在しないという前提に立つべきです。そのような常識が存在しないからこそ、既存の大企業が関連事業のスタートアップに取って代わられることがあるのです。 常識がない非常識を推奨しているのではなく、「常識の否定="否"常識」が重要なのです。
- 既存の常識の延長線上にあることではなく、帰納的アプローチで例外的なことを実行することで、大きなチャンスがある
周囲に「N1分析」を反対されたときは
- 無理に相手を説得しようとするのではなく、まず結果を出すことに集中する
トライ&エラー&ラーン
2割の成功と8割の失敗
- 100%の確率で成果を出し続けている人はいない
マーケティングは、「お客様をお客様自身が理解している以上に理解すること」に尽きます。
- 結果を出し続けているマーケターは「顧客視点」を強く持つ人ばかり、人間に強い興味や関心を持っている。
どんなときも、まずはお客様と向き合うこと。
自らお客様と向き合って何が顧客の価値になるのかを考え、仮説をつくり、施策に落とし込み、それを実行して、失敗したらそこから学んでいくしかないのです。
このことはマーケティング担当者に限らず、営業担当者も同じです。
たとえば、あなたがBtoBの営業担当で5社のクライアントを担当しているなら、それぞれのクライアントに価値が成立するWHOとWHATの組み合わせは何かを考えてみてください。
自ら体感する「トライ&エラー&ラーン」
- 多くの失敗をし、何が問題だったのかを振り返り学ぶことで、「このまま進んでいいのかどうか」が見えてくる
大事なことは、自ら体感する「トライ(実行)&エラー(失敗)&ラーン(学習)」です。
やってみて、失敗したら、振り返って学習すること。今から思うと、自分が一番学んで成長したと感じるのは、お客様に対する新しい発見や理解を「自分事化」できたときです。学びとして最も大きいのは、やはり自分自身の経験です。
- 失敗するリスクより、失敗から学び次につなげていくほうが成功する確率も高い
これからのマーケターに求められるもの
- AIによって、市場分析やデータ分析、過去データをもとにした打ち手の考案、WEBサイト構築、広告の制作など大半は自動化されていく
マーケターに最終的に残る仕事は、データ化できないような、お客様本人すら気づいていないその人の心理や行動を洞察し、インサイトをつかみ、それをどのような新しい価値、つまり独自性のある便益として 提供できるかを想像し、実際に作り出すことです。
- 軸になるのは「それはお客様にとってどんな価値をつくることができるのか」「顧客起点」が大事
