第4章 正しく権限委譲を機能させるルール
チームの成果の最大化、生産性の工場、人の成長のすべてに対して必須の仕組みが、本章で述べる権限委譲です。
権限委譲とは、本来、上司が持つ権限の一部を部下に委ねることです。
権限委譲で期待できる3つの効果
- 裁量権を部下に移管して意思決定プロセスを簡素化し、現場の対応力が高まる
- 上司の行っていた判断を、自ら行うという経験を積むことによる担当者の成長
- 部下への権限委譲によって生み出した時間を本来のマネジメント業務に充てることができる
ただ、多くの管理職が口にするのが、権限委譲をしたくても任せられる人がいないという悩み
ルール19 できない人に任せてできるようにする
権限委譲とは、出来る人に任せることではありません。権限委譲とは、「できない人に任せて、できないところをサポートして、できるようにすること」です。
ルール20 任せるときには判断基準を共有する
裁量権を与えただけでは権限委譲とは言えない
- 何を優先させるべきかわからない
- 正しい権限委譲とは、裁量権と判断基準が同時に与えられるものでなければならない
- 部下と業務方針を共有するためには、管理職自身がチームの中心業務に対する業務方針を明確に持っていることが前提
- 上から降りてくる業務方針を、自分のチームに落とし込むとどのような表現になるのか、どう伝えれば部下が自分事として理解できるのか、自分の言葉で定義し、部下たちに伝える
ルール21 迷わず介入すべき3つの局面
- 任せた以上、口に出すべきではないと考える上司も少なくない
- 過剰な介入で実質的に自分が仕切るのは避けるべきだが、局面に応じた必要最低限の介入は必要
①判断根拠に危うさを感じたとき
②人間関係が悪化してきたとき
③重要なリスクが増大しているとき
ルール22 フィードバックは時間差なしで行う
「あとでまとめて」は成長機会の剥奪になる
1on1ミーティングを半年先まで入れてしまう
- 1on1ミーティングの目的は、日々の仕事のスピードと質をより高めていくための実務的コミュニケーション
- 1on1はミーティングはお互いが伝えたいことを事前にメモして準備するなど、明確な目的意識のもとで臨む
原則はリアルタイムのフィードバック
1on1ミーティングは上司と部下が仕事をより良く進めるために協力する時間
上司は部下の仕事を正確に把握して正しく評価する責任がある
- 部下は部下で自分の成果を過大評価しがち
- 両者のギャップがあったときに、数ヶ月に一度の評価面談で言われても、納得感がなくなってしまう
ルール23 「君ならできる」という安易な言葉は信用されない
「君だからできる」で根拠を伝える
- 君だからを伝えたあと、自分がサポートすることを明確に伝える
「部下データベース」をつくる
- 職歴、専門性、これまで経験してきた業務、ここまで出してきた成果、自分が感じた部下の特性や強み、苦手だと感じること、成長してきたと思う分野などを、随時更新していく
パート24 無敵の人材価値「マネジメントができる専門家」を目指す
マネジメントに専念するほど人材価値は低下する
- 私たちが目指すべきは管理職の姿は「マネジメントが出来る専門家」
なぜ、「マネジメントができる専門家」なのか?
1つ目の理由
- チームの成果最大化につながるから
2つ目の理由
- 特定分野の専門性を維持・向上させ続けることが、自分の人材価値を高めることになるから
- マネジメントと実務の両立のために、仕事の生産性を高め、さらに権限委譲によって時間を確保する
隠れプレーヤーとして専門性を維持する
両立のために意識すること
- 管理職になってもプレーヤーとしての時間を一部残す
- その時間をつくり出すために管理職としての生産性を高める
- 自分が最高のプレーヤーとして仕事をしている姿を部下に見せる。しかし、部下にもチャンスを与えて、それを全力で支援する
- 現場のことは1から10まで把握する。ただし、それはあくまで管理職として質の高い意思決定をするためにであり、把握しても余計な口出しはしない
- マネジメントに専念することを上司から求められたとしても、「隠れプレーヤーとして」仕事をする。