マーケティングの「戦場」論
「よりCPの高い商品」を生み出す必要があるだけをやっていてもマーケティングは成功しない。
商品を売るときには、ライバルの存在がある。
本章では、定義の残り部分の解明するべく、マーケティングの「戦場」という考え方について掘り下げる
【定義】マーケティングとは「一定費用の元で、適切な買い手郡にとって よりコストパフォーマンス(CP)の高い商品を生み出し、 その存在を認知させ、その内容を理解させ、これを送り届けることによって、 粗利を最大化する総合活動」である
11 マーケティングの「戦場」とはなにか?
- 買い手が「買おう!」という意思決定を行ううえで必要条件は、その商品が「手に入れてもいい」もの、「買える」もの、「買ってもいい(=CPが高い)」ものでなければならない
- 上記をクリアした商品は、ようやく購入候補として残ったにすぎない
- それぞれの書いてはふるいにかけられた競合商品たちを頭のなかで戦わせます。
- 買い手の購買の意思決定を下すのは、そのなかで「最高」とみなされた商品だけ
- No.1だけが勝ち残るーこれがマーケティングの戦場における掟
「最高の商品」になるための2つの道
①戦場で最もCPが高い商品を生み出す
②競合がいない場に商品を投げ込む
まず「買い手の欲望」があるーニーズとウォンツ
- 戦場は、あくまでも個々の買い手の頭のなかに存在
- 同じような競合商品の戦場を持っている買い手たちが、集まったとき、そこに生まれるのが「市場」
- 戦場は市場よりもいっそう根源的な概念
市場のなかに、自社商品のCPを最高と判断してくれる人たちの集合を独壇場と呼んでいる
戦場よりもさらに手前に存在しているものが人の欲望
①ニーズー生活上必要な、ある充足状態が奪われている状態(欠乏状態)を満たしたい気持ち
②ウォンツーニーズを満たすための特定のものが欲しい気持ちニーズとウォンツの違いは、相対的なもので、ウォンツというのは、ニーズの相似形的縮小であり、それ自体が階層の低いニーズ
- 目的と手段の関係
- 本書では、両者を区別せず「ニーズ」という言葉で統一
- 買い手には、必ず「こうしたい」という理想状態、言い換えれば「目標」がある
- 買い手の頭のなかに戦場が生まれるためには、商品価値の厳選たるニーズ(買い手の目標)が不可欠である
購買意思決定の4ステップーダイヤの指輪を例に考えてみる
購買意思決定のプロセス
①.ニーズの形成
②.商品の列挙
③.戦場の形成
④.購買の意思決定
12 戦場の「すれ違い」はいかにして起こるか?ー競合しない商品たち
一見すると同じ戦場には居合わせることがなさそうな商品同士が、競合関係になっていることもある
- 買い手のニーズ → 「ファンタジーの世界に浸る」の場合は、東京ディスニーランドとユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が比較する
- 買い手のニーズ → 「家族の歓心を得ること」の場合、「TDLやUSJに行く」「高級レストランで外食する」「プレゼントを買う」「ちょっとした旅行をする」
上記とは逆に、同じ戦場に属していて、競合になりえないケースもある
背景には、次の3つの要因が考えられる
①.求めるパフォーマンスが質的に違う
②.求めるパフォーマンスが量的に違う ③.コストがあまりにも違う
13 「競争なきマーケティング」はどこにある?ーニーズに応じた3条件
- 著者は、レッドオーシャンを抜け出そう!と呼びかけることにはやや懐疑的
- マーケティングの業務は「競合が存在する戦場」で行われるのが普通で、そのなかで最高のCPを実現をしようというのが、マーケターに求められている。
- しかし、競合関係がないまま、購買の意思決定がくだされるケースもある
「競争の存在しない世界」では、どんな原理原則が動いているのか?
買い手のニーズは、どんなモードにあるか?
購買意思決定のプロセス
- ①.ニーズの形成
- ②.商品の列挙
- ③.戦場の形成
→ ここのふるいの上に残された商品が一つだけになってしまうこと - ④.購買の意思決定
- ①.ニーズの形成
なぜ、このようなことが起こり得るのか?
- どのようなときに、「場に一つだけの商品が存在する状況が生まれるのか?
- いくつかのパターンとニーズがどのようなモードにあるか依存する
買い手のニーズ
①ニーズが顕在的ー買い手がみずから、「〜したい」と言葉・絵で表現できる
②ニーズが潜在的ー他者から「〜したいですか?」と聞かれて初めて、買い手が「はい」と答えられる、目的が明確に意識されているわけではないが、買い手の頭のなかには眠っている
③ ニーズがないー買い手は「〜したい」とも思っていないし、「〜したいですか?」と聞かれても「いいえ/わからない」と答える
ふるいの上に残された商品が「1つだけ」になるとき
- 上記ニーズのありかたに応じてそれぞれ3つのパターン
- ①ニーズはあったが、それを満たす商品が存在しなかったとき(顕在的)
- ②潜在的だったニーズを、売り手が商品によって顕在化させたとき(潜在的→顕在的)
- ③なにもないところから売り手が新しいニーズを生み出したとき(無 → 顕在的)
「みんながずっとほしかった商品がついに登場!」ーニーズが顕在的
「そうそう、じつがこれがほしかった!」ーニーズが潜在的
「よくわからないけど、買ったほうがよさそう…」ー「啓蒙」のマーケティング
14 競争を避けるマーケティングの系譜ー破壊的イノベーションとブルーオーシャン戦略
「老舗の商品」ほどコスパが悪くなるワケー破壊的イノベーション
持続的イノベーションとは、既存市場で求められている価値を向上させるイノベーションを指します。一定規模のある大企業や歴史のある優良企業は、既存商品にいっそう高い付加価値をつけることで他者との差別化を進める戦い方を得意としています。
- しかし持続的イノベーションはいつしか、オーバーシューティング(過剰解決)を引き起こす
- 既存の価値属性を追求した結果、買い手が望む性能を超えてしまう現象
その結果、ふつうの買い手にとっては価格上昇に見合ったパフォーマンス向上がなく、同社の商品のCPはどんどん低下していくーこうして巨大企業が袋小路に追い込まれていく現象をイノベーターのジレンマと呼んでいる
他方で、余計な性能を切り捨てたり、価格を大幅に引き下げたり従来と質的に異なる価値属性で勝負して、CPの高い商品が同じ市場の中に登場することで、これまでのまったく別の買い手を惹きつける
- このことが市場のルールそのものを変革してしまう技術革新を「破壊的イノベーション」と呼ばれる
価値を「減らす」「取り除く」「付け加える」ーブルーオーシャン戦略
バリューイノベーションを生み出す要諦3つ
①減らす ーー商品の価値が損なわれない範囲内で、自然界における一般的な価値属性(Property)の量を削る。それによってコストを削減して、商品のCPを高める
②取り除くーー買い手にとって不必要な価値属性の軸(Attribute)そのものを切り捨てる
③付け加えるーー買い手が価値を感じる軸を新たに増やす
15「新規買い手」の獲得か、「既存買い手」の奪取か
両者を総合するのなら、競争を避けるマーケティング戦略は、次の3ステップにまとめられます。
[ステップ①]買い手のパフォーマンスにつながらない価値属性の量を減らし、場合によっては軸そのものを取り除く
[ステップ②]コスト(とくに価格コスト)を落とすことで、競合よりも高いCPを実現する
[ステップ③]これまでなかった価値属性の軸を新たに加える
- このなかで最も大事なのは③
- 補足としては、③がかならず「新規買い手の獲得」につながるわけではない
マーケターに与えられる唯一の手がかりは「既存の買い手」
-競合関係のなかで新たな価値軸を発想・検証しようとするときには、自社や競合が抱えている「既存の買い手」を考察することが有効 - 従来の買い手は"ほんとうは"次になにを求めているのだろうか?を探索する - 他方で、これまでと別の新たな買い手を獲得するときにはいったいなにを手がかりにして新たな価値軸を探っていくのか
新規の書いてはいつも「副産物」にすぎないのでは?
一定の競合関係のなかで、自社と競合が抱えている既存の買い手を徹底的に考察し、そこから潜在ニーズに答える新たな価値軸を見つけていくしかないのだと思います。
16 マーケティングの「上流」と「下流」
知ってもらえないことにははじまらない
- 自社商品についての情報が「買い手の頭のなか」になければならない
「中身がわからない」と選ばれないし、「手元に届かない」と儲からない
- 買い手が内容が分からなければ、その商品のCPを判断しようがない
- 商品を買い手のもとに届けて、対価を受け取って初めて、その販売行為は現実の利益を生み出す
「下流」とは「価値の低い仕事」という意味ではない
マーケターが認知獲得や情報伝達、店頭露出、流通管理といった「下流」の施策にいくら力を入れたところで、売ろうとしている商品のCPが低ければ、すべての努力は無駄になりかねない
- マーケティングにおいて最も大事なのは「CPの高い商品」を生み出すこと
17 「気に入ってくれる人」はどこにいる?ーターゲットセグメンテーション
万人に好かれなくていいー「適切な買い手郡」を見つける基準
- 商品の内容を理解したときに、そのCPを「最高」だと思ってくる人たちが「適切な買い手群」
「それってどういう人なの?」を繰り返すー絞り込み
自社製品を最高のものと評価してくれるコアターゲットは、どういう人なのか?を徹底的に"翻訳"していく活動と同時にそういう人が欲しがるのはどういう商品なのか?という発想が必要
まずは、狙うべき市場規模が概算できて、具体的なアプローチが見えてくるまで、「それってどういう人なの?」という問いを繰り返す
手探りでも「ターゲット仮説」をつくるべき
「自社商品を最高のものと評価してくれる人はこういう人である」という仮説データをつくること
- 仮説があるから、ターゲットの解像度を高めていく手がかりが得られる。この繰り返しが大事