第5章 マーケティングの「道具」論
- マーケティングにおいて3Cや4Pのようなフレームワークが当然のものとして鵜呑みにされており、その原理がよくわかっていないこと
- 最後となる本章では、マーケティングのフレームワークが本来どういうものなのかをとらえ直し、従来の代表的なフレームワークの妥当性を検証していく
27 MECEとロジックツリー 「フレームワーク」とはなんだろう
- マーケティング戦略を立案する際に、自分たちに入り込んでいる「バカの壁」を言語化すべき
- そうした区画整理をやったあとに、それぞれの枠組みを意識しながら発想したほうが、アイデアの多様性(広さ)は高まる
- これがフレームワーク思考の本質
「単なるツール」と「フレームワーク」はどこが違うのか?
- フレームワークと呼べる条件は、思考の見落としを防いだり、発想を広げるチェックリストとして機能するかという点
MECEはフレームワークではないー「ダブりなくモレなく」の意味
- 肝心なのは、思考の見落としを防いだり、発想を広げたりするのに役に立つために、どんな性質をもっていなければならないか
- この問いに対する答えがMECE
- MECEはフレームワークではなく、フレームワークを満たすべき条件である
- そのツールがすぐれたフレームワークかどうかはそこに含まれる各項目がMECEになっているかによって評価できる
ロジックツリーとフレームワークの関係性
ロジックツリーはあくまでMECEな枠組みを作るための手法
ここから、フレームワークをマーケティングの原理に照らしながら、「モレやダブりがないか?」「普遍性はあるか?」「どんな局面で役立てるべきか?」「そもそも役に立つのか?」といった観点で検証していく
28 3Cー「競合に対する強み/弱み」を把握する
- 企業の「強み/弱み」を把握するためのフレームワーク
①Customerー顧客(買い手)
②Competitorー競合
③Companyー自社
「競合との争い」だけに目を向けるフレームワーク
- 3Cというフレームワークは狭義の競争、「競合との競争」を対象にしている
- 3Cで分析されるのは「競合に対する強み/弱み」を把握するにあたってはつねに意識すべき視点
- あくまで「競合と戦う自社を買い手視点で見た場合の強み/弱み」
3Cは「競合に対する強み/弱み」を分析には使えるが、マーケティング戦略立案に必要なすべての強み/弱みを考える上では、役に立たないということは押さえておくべきでしょう。
また、そうした限界を補うために、いくつかCを増やしているケースが散見されますが、それらのフレームワークがほんとうにMWCEだと言えるのかについては、別途の検証が必要になる
29 4P と 4Cー「マーケターの行動」を構成するもの
①.Product 商品
②.Price 価格
③.Promotion 販売促進
④.Place 流通
- 4Pはマーケティングの行動そのものを分割したもの
「4Pの弱点」をカバーするマーケティングの定義
- 4Pで気になるのは、それぞれの要素がなにを意味しているのかがややあいまい
【定義】マーケティングとは「一定費用の元で、適切な買い手郡にとって よりコストパフォーマンス(CP)の高い商品を生み出し、 その存在を認知させ、その内容を理解させ、これを送り届けることによって、 粗利を最大化する総合活動」である
- この定義には4Pのそれぞれに対応する要素がすべて含まれている
コストパフォーマンスは4Pでできている
- 定義の中核をなしているのは、パフォーマンス ÷ コスト = コストパフォーマンス(CP)の概念
- コスト = 価格コスト(Price) + 到達コスト(Place)
パフォーマンス = (機能性パフォーマンス(Product) + 情緒性パフォーマンス(Promotion)) × 商品の効能を享受するまでにかかる時間の短さ(Place)
4Pは「目標」と「買い手」に設定を除いた、マーケティングに関わる行動の中核要素について、モレなく押さえている
4P分析ではどのみち3Cを使うことになる
- 3Cは4Pのなかに内包される
30 5Fー「業界の魅力度」を多面的に評価する
- 5F「ファイブフォース」には5つの力との関係性をもとにして、業界内の競争環境を分析するフレームワーク
①.Competitive Rivalryー競合との敵対関係
②.Bargaining Power of Suppliersー供給業者との交渉力
③.Bargaining Power of Customersー買い手との交渉力
④.Threat of New Entrantsー新規参入業者の脅威
⑤.Threat of Substitutesー代替品の脅威
- 5Fでは、買い手や供給業者との関わりも含めながら、多角的に競争をとらえようとしている
2つの使いみちがあるー戦略の源泉&戦略の検証
- 5Fの2つの局面のでの使いみち
①.マーケティング戦略の立脚点になる「自社の強み/弱み(力関係)」を把握するとき
②.立案したマーケティング戦略の「有効性(目標達成の可能性)」を検証するとき
- 強み/弱みは相対的な概念のため、つねに「誰かに対する強み/弱み」であり、一定の競争相手との力関係のなかで決まる
供給業者に対する強み/弱みー変動直接原価
ライバルたちに対する強み/弱みー自社の市場シェア
買い手に対する強み/弱みー市場全体の売上
「魅力」というのは主観的な概念である
- フレームワーク 5Fは本書のマーケティング戦略の土台となる「変数」をモレなくカバーしている
- 補足として、5Fは「業界の魅力度」を判定するためのフレームワークだとも言われている
- 5Fにおける「業界」とは、買い手や供給業者、将来的に競合し得る心筋参入業者や代替品の提供者などもひっくるめた、多元的な競争の空間
- 5Fにおける「魅力度」とは、「期待粗利率(=粗利の期待値(目標)÷投下資本量)」によって定量化出来る
- ただしどういう業界が魅力的なものとして映るかは、観察主体によって大きく異なる
- 5Fで分析される競争は、あくまでも「自社の視点から見た競争」、自社そのものは考察の対象外にある
- 5Fを使うときには、「色眼鏡」の存在を意識することが大切
- 自社が現実的にその戦略を実行に移されるか否かに大きく左右される
31 SWOTー混乱を招く理由はどこにある?
●内部環境
・①Strengthー強み
・②Weaknessー弱み
●外部環境
・③Opportunityー機会
・④Threatー脅威
- SWOT分析をいきなるすると表面的なポイントに目が行ってしまい、有意義な分析にはならないため、個別で役に立つような場面がない
「強み」と「機会」は不即不離である
- SWOTを使った結果、混乱するだけで終わってしまう
なぜこうしたことが起きるのか?理由は3つ
①そもそもMECEではない
②「なんのために?」が不明確
③「誰に対して?」が不明確たいていの強みは、機会と切っても切れない関係にある
ただ「箱を埋めよう」としていないかー目的は「戦略の源泉」の発掘
- よりすぐれた戦略を考え出す目的で強みや弱みを洗い出すことができない
- 戦略の源泉になり得ないものは強みではない
- こうしたことを忘れて、なんのために?を考えす箱を埋めることに意識を奪われている人が多い
「競合に対する強み」しか検討されていないーSWOTは5Fに還元できる
- 強み/弱みは「誰かに対する強み/弱み」であり、「競合に対する」ものだけではない
- 競合だけでなく、買い手、供給業者などに対しても強み/弱みを考える必要がある
- 3つ目の点が、SWOT分析において穴が生まれる最大の原因になっている
- これを防ぐために、最初から5Fにおける「5つの競争相手」を想定して、それぞれに対する強み/弱みを考えていくのがいちばん
32 バリューチェーンー優位性の「源泉」と「継続性」を見きわめる
商品が生まれて買い手に届くまでの一連の流れに着目し、各段階の活動においてどのようなバリューが生み出されているのかが分析されます。
- ポーターが語っている「バリュー」は本書のCP(コストパフォーマンス)とほぼ同じ
- 本節では、「バリュー = CP」と考える
業種・業界・商品に応じてアレンジすべき
- バリューチェーンにおいて大切な2点を把握すること
- 「自社商品のバリューがどの段階において生み出されているのか(自社の強みはどこにあるのか)」
- 「どの段階でバリューが低下しているのか(自社の弱みはどこにあるのか)
- バリューが形成されていく時間軸によって各項目がモレなく切り分けられていれば、上記型にとらわれなくてよい
- 業種・業界・商品によって各段階の粒度も異なるため自分たちなりのバリューチェーンを考えることは不可欠
強み/弱みの「出どころ」を明らかにするツール
- バリューチェーンの分析する意味は、自社の強みや弱みの「源泉」をはっきりと捉えられる
- 強み弱みがとくにどのプロセスに由来しているのかを把握することができる
- 強み/弱みの源泉を自社の各プロセスにひもづけると、それらの継続性も評価しやすくなる
33 3つの基本戦略ー「攻め手」のワンパターン化を防ぐ
- ポーターの3つの基本戦略、企業による「市場の攻め方」を分類
①.コストリーダーシップ戦略
②.差別化戦略
③.集中戦略
実際には「4つの戦略パターン」が含まれている
- 競合との競争に勝つために企業がやれること
- 買い手にとってのコストパフォーマンス下げる
- 買い手にとってのパフォーマンスをあげる
①市場全体に対して、コストを下げる
②市場全体に対して、パフォーマンスを上げる
③特定市場に対して、コストを下げる
④特定市場に対して、パフォーマンスを上げる
- ①がコストリーダーシップ戦略
- ②が差別化戦略
- ③がコスト集中戦略、④差別化集中戦略が集中戦略とひとまとめにされている
無意識のうちに、似た戦略を繰り返していないか
- マーケティング戦略を作成していくときには、既存の強み/弱みがベースになるため、攻め方がワンパターンになりがち
- いま考えている自分たちの戦略がこの4象限のうちどこに位置づけられるのかを意識できる
- 3つの基本戦略は「バカの壁」を顕在化し、「壁」の向こう側にあるより多彩な戦略アイデアにまで発想を広げるというのが、このフレームワークの正しい活用法
34 AIDMAとAISASー買い手の「歩留まり」を高める
AIDMA
Attentionー(注意)知る
Interestー(興味)興味を持つ
Desireー(欲求)ほしいと感じる
Memoryー(記憶)記憶する
Actionー(行動)購買する
AISAS
Attentionー(注意)知る
Interestー(興味)興味を持つ
Searchー(検索)情報収集する
Actionー(行動)購買する
Shareー(共有)情報を共有する
理想値に対する「取りこぼし」を極小化する
「そもそもの規模」に意識が向きづらい
- もし売上が目標に満たない場合、大きく2つの原因が考えられる
- 「潜在買い手 → 現実の買い手の歩留まり」を見誤っている
- 「独壇場(潜在買い手)そのものの規模」を見誤っている
- 上記2つのフレームワークを使うときは、「潜在買い手 → 現実の買い手の歩留まり」を見誤っている際に有効
そこまでの普遍性はないートライアルとリピート
- AIDMAは初回購入、トライアルが前提にされている
- AIDMAやAISASを構成するステップに普遍性があるわけではない
- 潜在買い手の行動の時間軸を自分なりに分解して、オリジナルのフレームワークを自社の商品特性に合わせて作ったほうが良い
35 PPMーマーケティング費用配分の「全体最適」を探る
- PPM(Product Portfolio Management)
縦軸に市場成長率、横軸相対市場シェアが設定され、それぞれの高低に応じて「花形・金のなる木・問題児・負け犬」という4象限
- PPMは発想を広げるツールではなく、評価基軸