第2章 状況 置かれた「状況」が人の意思決定に影響する
ケンブリッジ大学のバーバラ・サハキアン教授によると、人は一日に最大35,000回もの意思決定をしている
この意思決定を「自分で主体的に行っている」と思っていませんか?
実は人間は周りの「状況」に「意思決定させられている」ことをしめす理論が多数ある。
大学選びさえ天気で決まる!?
- ◯◯大学がいまいちだったのは天気が悪かったからに違いないと、逆に大学を過大評価したり、キャンパスの綺麗さなど外形的な要素ではなく、カリキュラムなどに代表される実質的な要素を過大評価するという結果も報告されている。
「系列位置効果」
人がいくつかの情報を覚えようとするとき、情報の「順番」によって記憶の定着度合いに差が出るという理論
- 例えば、採用面接でやオーディションで10名集められて何番目が良いか。
そこで影響するのが、「初頭効果」と「親近効果」という理論
初頭効果
初めに得た印象が残りに強い影響を与える。
親近効果
最後の情報が意思決定に大きな影響を与える
- 上記2つは、順番に企画のプレゼンをする場合、以下のような判断で順番を選ぶと良い。
- 「会議後、その日のうちに結論が出るなら」 ⇒ 親近効果
- 「幹部が各自検討して、来週までに結論が出る」⇒ 初頭効果
比較セミナーなどは初頭効果を狙いにいったほうが良さそう
「過剰正当化効果」
もともと内発的動機で取り組んでいたところに、金銭的報酬などの外発的動機が用意されると、モチベーションが下がってしまう。
- 例えば、趣味で動画編集を出来るAさんが、同僚の動画編集作業をボランティアで手伝っていたときに、最初は好きで楽しいのと役にたててるの嬉しい状況のところを、上司が「特別手当」を払うと言いました。最初はラッキーと思っているAさんも、だんだん編集の仕事が嫌になってきます。
「情報オーバーロード」
多すぎる情報のせいで、人が非合理な行動をしてしまう
- 例えば、メールは少なくとも50回、多い人だと100回もチェックしている。(今だとSlackで置き換えたほうがよいかも)
- マイクロソフトの研究だと、同社の社員を対象とした調査でメールによって仕事を中断すると、元の仕事にもどるまでに、平均24分かかることが判明。しかも、その大量のメール1/3は不要なメールであると結果が出ている。
こういった「情報オーバーロード」の弊害がわかっていても、なお多くの人が「仕事を上手く進めるためには膨大な量の情報が必要だ」と思い込んでしまっている。
意識するべきは「指示やフィードバックは簡潔に」、「少数から始める」「優先順位をつける」など
ナッジ理論
選択肢が多いほうが人は集まりやすい。しかし多すぎると選択オーバーロードになり、どれも選べなくなってしまいます。
- 例えば、バー経営をしていて、「クラフトビールの種類の豊富さ」が売りの場合。以下のような種類やおすすめを作る方法で、"軽くつつく"のがナッジ理論
- ビールの種類
- ビールの味
- ビールのアルコール度
- 本日のビール
- 人気のビール
ジョブズに学ぶ"テキトーな選択"の極意
ジョブズが黒のタートルネックだけを着ていたこと、オバマ元大統領も「3着しかスーツを持っていない」こと、マーク・ザッカーバーグも「服装をパターン化している」ことも「そもそも選ばない」という方法を取っている。
本書が提案するのは、「そもそも、その選択に時間をかけるべきか」ということを気に留めること。
「何」を「どう」提示するかで人の判断が変わる
プライミング効果
提示されたプライマー(刺激)によって、人の行動が変容することを言います。プライミング効果が非常に興味部会のは、色、音楽、位置、匂いといった刺激が無意識のうちに人の意思決定に影響を与えているという点です。
- 自動車のECサイトの例
- 「背景が緑」では価格重視モデルを選んだ人が多い
- 「背景が赤」では安全重視モデルを選んだ人が多い
- ワインの例
- フランスを連想させるBGMがながれているとフランスワインを選んだ人が多い
- ドイツを連想させるBGMが流れているとドイツワインを選んだ人が多い。
- 上記、実験のあとにBGMについて自覚をしていた人は15%ほど
フレーミング効果
「プライミング効果」と併せて理解しておきたいのが、「フレーミング効果」です。同一の内容であっても何を強調するかによって受けての意思決定が変わる
- 牛ひき肉の例
- 「A.赤身 75%」
- 「B.脂質25%」
- Aのほうが高評価になった。
- 老後資金の管理の例
- A.あなたが55歳まで生きる確率は何%だと思いますか?
- B.あなたが55歳までに亡くなってしまう確率は何%だと思いますか?
- この結果をもとに、自己申請の平均寿命を数値かすると「A」のほうが「B」よりも平均寿命が10年ほど長くなった。
- 背景にはAは、55歳まで「生きられる原因」に焦点があたり、Bは、55歳までに「亡くなってしまう原因」に焦点が当たってしまう。
「並列評価」と「単独評価」
同じ情報を違う表示にするだけで人は非合理な意思決定をしてしまう。一方で、人は比較をすることでより良い決定をすることもできます。
- 中古の辞書の例 以下の場合どちらにいくら払うか?
- A.コンディション良好でカバーにダメージもなく、1万語収録
- B.カバーが一部破れている。こちらは2万語収録
- 1冊だけ見て値段を決める「単独評価」の場合
- 人はカバーの有無などわかりやすい基準に注目する。つまり辞書Aの方が高くなる。
- 2冊を比較する「並列評価」の場合
- ◯万語収録が検討しやすくなり、Bの方が高くなる。
パワー・オブ・ビコーズ
何か人にお願いするとき、「理由」を添えるだけで、受け入れてもらえる可能性がぐんと上がるという理論です。ポイントはその理由は「何でもいい」という点です。
1970年代に行ったコピー機の実験。コピー機で並んでいる人に以下のように声をかけたら、どれが前にいれてもらいやすいかの実験
- 結果は以下の通りで、2,3の結果はほとんど変わらない。
- 1が60%
- 2が93%
- 3が94%
感情移入ギャップ
- 疲れてきたら判断に影響が出るなとは考えない。そのため、人は「その先の違う状況に置かれている自分」の実像を捉えるのが苦手で、かなり楽観的に理想像を思い描いている。