第3章 感情 その時の「感情」が人の意思決定に影響する
そもそも「感情」とは何か?
喜怒哀楽より、"淡い感情"が人の判断に影響する
「感情」には、皆さんが創造するであろう「喜怒哀楽」と、淡い感情のアフェクトがあります。
- 人は、「喜怒哀楽」ほど大きな出来事を受けて湧き上がる「エモーション」よりも、はっきりしない「淡い感情」を頻繁に抱く。
- タバコが苦手な方が「タバコ」と聞くだけでちょっと嫌な感じがするなど
感情のマーカー
- アフェクトはどのようにして生み出されているのか?
- 脳は経験によって"色分けされる"
例えば、犬を見たときの例
- 幼いころに犬と遊んで楽しかった経験があれば、ポジティブ感情のマーカー
- 幼い頃に犬は噛みつくかもしれないと母親に繰り返し言われて育った人はネガティブ感情のマーカー
微々たるアフェクトでも意思決定に左右されてしまう。ポジティブなら、やる気が出て早く取りかかる。ネガティブなら憂鬱になりできるだけ後回しにしようとする。
「ポジティブな感情」は人の判断にどう影響するか?
拡張・形成理論
ポジティブな感情は、将来的に幸せになる上昇スパイラルの引き金となる。これは理想論ではなく研究論文で、ノースカロライナ大学の心理学者バーバラ・フレデリク損が「拡張・形成理論」として最初に発表し、現在まで2万件以上引用がされています。
- ポジティブな感情は仕事の効率も質も上げ、心身ストレスを軽減させる
「ネガティブな感情」は人の判断にどう影響するか?
ネガティブ・アフェクトは人類の敵か味方か
ネガティブ・アフェクトは「脳の中の小さな不安や不満です」小声でつぶやかれているので注意しないと聞き取れませんが、頬って置くと大きくなってしまいます。
認知的再評価
ビジネスにも役立つ研究として知られているのが、「認知的再評価」。自分が抱いている漠然とした感情に目を向け、理解し、再評価し、もっと役立てるというものです。
- 成功している人と自分を比べて、嫉妬するのではなく、「〇〇さんにも負けなくないから頑張ろう」とネガティブフレーミングで考える。
- 比較の対象を変え、「成功している人」ではなく「5年前の自分」と比べて、どれだけ成長したかを具体的に挙げていくのも良い。
2分間のスピーチを最高のスピーチに変えたもの
- 実験の被験者は2分間のスピーチをするよう求められる。内容は「自分はいかに仕事が出来るか」被験者たちは2つのグループに別れて、スピーチを始める前に次のようにつぶやくよう指示された。
- グループ1「私はワクワクしている」
- グループ2「私は平常心で落ち着いている」
- 実験の結果、高評価を得たのは「グループ1」 ネガティブな感情を認識し、その上で「やる気」などのポジティブ・アフェクトに変換するほうが良いという結論。
"すぐやめよう"で、ネガティブ・アフェクト・モード脱出
何か仕事や運動を始めるとき、きちんと目標を立てたのはいいのですが、なんだか「嫌だなぁ、無理そうだ」とネガティブ・アフェクトが湧いてきたこともあるのではないでしょうか?そういうことが起きやすいときには、「あえて目標を立てず、すぐにやめるつもりで」始めることをおすすめします。
- 企画書、運動、勉強などを「5分」だけまずやってみる。結果、自分のなかにポジティブ・アフェクトが生まれ「始めた」というだけの成果や、小さな達成感が出てくる。また、いったん始めると現状維持効果が働いて継続できる。
感情が「お金の使い方」にも影響を与える
アマゾンは「キャッシュレス効果」であなたを麻痺させる
行動経済学では、キャッシュレスの人のほうがお金を使いすぎてしまうことがわかっています。
アマゾンはカード決済、ワンクリックで購入が完結する。解体商品に対するポジティブ・アフェクトに導かれるまま、麻痺したような経済感覚での買い物になりがちです。
キャッシュレスだとお金の決済の際の「透明性が低い」
- 現金の決済のほうが「透明性が高い」
- つまり「どれだけどのように使ったか」という感覚が強くなりネガティブ・アフェクトが生まれやすく、無駄遣いをしなくなります。
目標勾配効果 ー貯めたくなるスタンプカードの仕組み
- コーヒー店舗におけるスタンプカードの例:コーヒー1杯買うごとに、1つスタンプを押してくれる
- A店舗:スタンプを10個集めると1杯無料サービス
- B店舗:スタンプを12個集めると1杯無料サービス。ただし、最初から2個スタンプが押されている。
上記店舗だと、B店舗の方がお客さんが早くスタンプを集め終える。
B店舗の2つスタンプが押してあることで、2個の無料スタンプをもらえたというポジティブ・アフェクトが生まれ、「目標勾配効果」の影響で、カードにスタンプが押されるのを見るたびに、「こんなに集めた。あともうちょっとだ」とポジティブ・アフェクトが生まれる。
上記は仕事でも応用できる。例えば仕事のタスクを20個あるとして、最初の2-3のタスクは「メール確認」などのすぐクリアできるものにして、達成感のポジティブ・アフェクトを生む。
幸せをお金で買う5つの方法
- 1.経験を買う
- 2.稀なご褒美にする
- 時間を買う
- 先払いする
- 5.人に投資する
「コントロール感」も人の判断に影響を与える
人は元来、コントロールしたい生き物
人間は、「常に自分で意思決定し、行動している。人生をコントロールしている」と考えており、またそうしたいという強い欲求があります。 - コントロール出来る - 自分で決められる - 自分がやりたい方向に向くように影響を与えることができる
自分の「心理的コントロール」を高めることは、仕事の満足度、幸福度を高める効果があり、また部下の心理的コントロール力の感覚を高めることにより、部下の頑張りやコミットメントを高め、さらに離職の防止にもなります。
「不確実性」も人の判断に影響を与える
「不確実性理論」"先が読めない"が史上最強のストレス
人間の生活のなかで、「絶対確実」ということはほぼゼロ。
不確実性がネガティブな感情を生み出す事例として「がん」の疑いがあります。と病院で診断された後の調査
- A.結局「がん」ではなかった人
- B.実際に「がん」だった人
- Aの人は、がんではないと言われるとストレス値は下がる。Bの人は、告げられたその時はストレス値はあがるが、その後、告げられる以前よりもストレス値が下がった。
人は「悪い結果になるかもしれない」と思って不確実のままの状態のほうが心理的負担が大きい。
日常生活でも「困ったことになるのではないか」と不安になるより、「出来るだけのことはやった」と意識を変えて気分転換する。