エピローグ あなたの「日常を取り巻く」行動経済学
「自己理解・他者理解」と行動経済学
自己理解・他者理解は強力な武器になる
- 人はそれぞれ異なる「認知のクセ」を持っている。
- 自己と他者の理解が深まれば、自分や他人がどのように意思決定をし、それがどう行動につながるかわかります。
タイプ1 「促進焦点」か「予防焦点」か?
人が目標を達成するときの動機には大きく「促進焦点」か「予防焦点」の2つがあるというものです。
- 新しいプロジェクトを任されたときの例
- 促進焦点 | 成功したいから頑張る
- 予防焦点 | 責任者として失敗したくないから頑張る
促進焦点の人は、人生でやりたいことや成功の未来からモチベーションを得ます。成長、発展や昇進への欲求があり、動機づけは大抵前向きな結果の追求や目標達成。
意思決定のプロセスにおいては楽観的にで、リスクを取ることを恐れず、創造的な傾向があります。予防焦点の人は「こうなりたくない」という「現在の状態よりも下降したくない動機」となっています。自分がやるべきことや責任を果たすことがモチベーションと言っていいでしょう。
安全、安心や安定を求めることが特徴で、ネガティブな結果を避け、現状を維持することが動機づけとなります。意思決定のプロセスにおいてより慎重かつ几帳面で、義務と責任を優先し、リスクを避ける傾向がり、より潜在的な脅威や危険性に注目し、損失を最小限に抑えようとするのです。
タイプ2 「最大化」か「満足化」か?
- 次の休暇の予定を立てるときの例
- 最大化 | 時間をかけて徹底的にリサーチをする
- 満足化 | 人気トップ10に入っている観光スポットの中から適当に巡る
最大化タイプは、最善の選択をしようと、広範囲に及ぶ情報収集をし、すべての選択肢を一つずつ、じっくり検討します。結果的に、自分で気づかないうちに一つ一つの意思決定にかなりの時間をかける傾向があります。
満足化のタイプは意思決定のプロセスにおいて優先するのは、容易さと効率。つまりある程度ニーズを満たす選択肢を見つけたらその時点で情報収集をやめ、その中から直感に頼ったり、もしくはやや「テキトー」に選択肢を選びます。
タイプ3 「楽観」か「後悔回避」か?
お気に入りのレストランにちょっと値段が高めの新しいカフェができたときの例
- 1.「きっと美味しいだろう」と新しいカフェを試してみる
- 2.美味しくないかもしれないものにお金をかけたくないので、いつものお気に入りのカフェにいく
1を選んだのなら、きっと「楽観バイアス」が高い方かもしれません。物事がスムーズに行くと考える傾向が強く、また、基本的に自分の未来が平均的な人の未来よりも良くなる、あるいは統計的な数値より良くなると信じる傾向がある。
2を選んだ人は、「後悔回避バイアス」が高い方かもしれません。潜在的な利益がコストを上回っていたとしても、後悔する可能性のある決断を避けがちです。
以上3つのタイプは、自己、他者をより深く理解するために役立つ概念として学術的な研究がなされています。 もちろん、これらが行動経済学のすべてではなく、人間はもっと複雑なものです。複雑なものを知る手がかりとして3つのタイプを活用する。
「DEI」と行動経済学
DEIのスタートは認知のクセを知ること
DEIとは、多様性(Diversity)と公平性(Equity)と包括性(Inclusion)の頭文字をとった概念です。これを実現させるにはどうすればよいか。
行動経済学は、非合理な人間の「認知のクセ」を理解し、個人で何が出来るか、また会社として、日本社会全体として、何ができるかを考える際のガイダンスにもなります。
- バイアスが無意識にあると理解した上で、DEIを促進するため、アメリカで行っている採用活動
- 顔写真なしの履歴書が一般的
- さらに意識が高い会社だと、書類審査では、「名前」「年齢」は伏せています。また「母国」「宗教」なども無意識に影響されてしまうため。
私たちは、「認知のクセ」「状況」「感情」の影響を受けて、非合理な意思決定をする。それらは人間らしさであり、完全に排除することはできない、またその必要もありません。 大切なのは、正しく知って、いい方向に活用すること。 システム2を使い、自分の中で問うてみる。 自分、周りの人、世界を良い方向に「ナッジする」