第1章 人的資本経営の「なぜ?」と「なに?」
なぜ、今になって人的資本(人)が重要視されているのか?
人とは、企業の「勝ち(競争力)」を決め、企業が「価値」を提供すべき存在
- 日本だけでなく世界的に人の重要性が集まっている理由
- 企業の競争力(勝ち)を生み出す源泉が、人を含む無形資産に移っている
- 企業が生み出す社会的価値(社会の一員としての義務)も重視されている
企業の競争力(勝ち)を生み出す源泉が、人を含む無形資産に移っている
- 企業にとって人が重要なのは、なんとなく理解はできるけれども、数値的な根拠はあるの?という疑問に対しての、調査結果
1991年以降の66の先行研究を統合的に分析した結果、「人的資本のレベルの高さと業績は正の相関がある」という統計的な結果
この分析の人的資本のレベルとは、人材スキルの高さ、経験値の多さなどを定量化したもの
- 人的資本のレベルが高いと事業運営上の数値がよくなり、最終的に企業全体の売上・収益の伸びをもたらしていると同時に競争力を高め、「勝ち」を得るための重要な武器になっている
- この研究でもう一つの興味深い発見「独自の人的資本を形成するこのが重要」
企業が生み出す社会的価値(社会の一員としての義務)も重視されている
- 企業は誰のものか?の答え「株主のもの」からの変化
- 2019年のビジネス・ラウンドテーブル
人的資本経営・開示は「4方良しサイクル」を回す
- 人的資本経営・開示があるとき、ないときの比較をしてみる
- 登場人物は、経営者、株主(投資家)、人材、顧客
- 人的資本経営・開示のメリット
- 経営者…人材確保・業績の向上
- 株主(投資家)…安心して投資ができる、株価・企業価値の向上
- 人材…働く環境が良くなる
- 顧客…価値・満足度が向上する
人的資本経営・開示が「あるとき」のグッド・シナリオ
人的資本経営・開示が「ないとき」のバッド・シナリオ
人的資本経営とは何か?「人を大切にする経営」との違いは何か?
人的資本経営は「理性」と「人情」の両輪で組織を回す
経済産業省によると、人的資本経営の定義は次の通りです。
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方
調査によると、経営者の74%が「人的資本経営とは人を大切にすることと同義であり、何か新しいことを行う取り組みではない」と捉えている
これまでの「人を大切にする経営」と異なる点は「人材を『資本』として捉え」の一文
人は投資する量によって価値化変わる資産(可変資本)と捉えるべき
- 投資と同じように、冷静かつ合理的な目で、人に対する投資判断を行うことが求められる
- ただし、「理性」だけでは良い結果は得られない
- 20世紀初頭 アメリカの経営学者フレデリック・テイラーの「科学的管理法」→モチベーションの低下、人権問題などが起きた
- 必要なのは、理性的でありながら、人情を備えた「両利きの人材マネジメント」を行いこと、この両輪を大切にするのは人的資本経営
人的資本経営を実践するにはどうすればいいか?
人への投資目論見書を作成しよう
- A)人的資本投資の目的:どのような人と組織をつくって企業価値を高めるか?
- B)投資方針と仕組み:目指す姿を実現するために何を行うか?
- C) リスク要素:人的リスクにどう対応するか?
- D)運用実績・推移:どのような結果になったか(過去と比べどうなったか)?
- A~Cが第2章、Dが第3章で考える項目
プロのスポーツチームをつくるように考える
- これまでの日本の企業と人材の関係性は「昭和的」
- 企業に対する忠誠心、新卒から育成、一生涯付き合うことが前提
- これからの時代の企業と人材の関係性は、「プロのスポーツチーム」
フラットな関係性(業務委託の関係)で、チームの使命の達成、つまり勝利を目的とした集団です。個々人が自律的(プロフェッショナル)で自分のスタイルに合わなければ、他チーム(組織)に移籍することもいとわないような関係
これまでの雇用形態と就業者の志向性に大きな変化が生じている
- ① 「直接雇用される」ことにこだわっていない
- ②企業の使命(パーパス)を重視している
- ③キャリアや働き方に関して自律的に決めたいと思っている
- ④自分(一人ひとり)に合った体験を求めている
- ⑤転職に対する心理的なハードルが下がっている
こうした変化があることを認識して、「企業と人材の関係性はこれまでと同じという前提で考えず、この後の問いを考える。