第3章 人的資本経営を進化させる「人的資本の開示」をしよう
人的資本の可視化・開示の「なぜ?」と「なに?」
人的資本の可視化・開示は、上場会社以外でも必要
「人的資本の可視化・開示とは何か」を改めて振り返ると、次の2つを行うことでした
- 人と組織がありたい姿(ビジョン)に近づいているか、取り組み(人事戦略)がうまくいっているか確認する
- その結果を他者に説明・対話するとともに、フィードバックを受ける
前者が人的資本の「可視化」、後者が「開示」
- 目的は2つに整理
- 人・組織のビジョンや人事戦略の改善を行う(効果的な人への投資を行う)
株主・投資家、社内外の人材といった関係者に説明責任を果たして、取り組みや投資の賛同を得る
人的資本の「開示」は上場会社のみ、2023年3月期決算以降義務化
- 可視化・開示は上場企業意外にも深く関係がある。
- 人事戦略の改善や取り組みの賛同を得る取り組みはどんな企業も必要だから
- 2016年施行された「若者雇用促進法」はすべての企業が対象
人的資本の可視化・開示の5つのレベル
人的資本開示における本来の姿とは
- 人的資本の可視化や回jは「人事戦略の改善」「投資家等への説明責任を果たし、賛同を得る」というのが目的
- そのために第2章と第3章の問いにすべて答えて、開示していくことが開示レベル5であり、最終ゴール
- 2022年8月に発表された「人的資本可視化指針」の内容をポイントをギュッと凝縮
可視化・開示の流れとアウトプットイメージ
可視化・開示は2ステップで進める
- ステップ1|領域0で企業の使命(パーパス)や「経営戦略」を整理、その後、経営戦略と人事戦略を紐づける
ステップ2|領域1~7で人事戦略の「実現度」を確認
注意点、「測りすぎ(測定執着)」問題には気をつける
- 数値化にこだわるあまり、視点が狭くなったり、誤った判断を導いたり、運用コストが上がりすぎたりする問題
領域0 人的資本は、何に、どう貢献しているか?
問い27 あなたの会社の存在意義は何か?
パーパスはなぜ重要で、どのようなものなのか?
「自分の価値観やミッションと一致する仕事をできるなら、職位や報酬の譲歩をしてもよい」
日本の若手従業員(18~34歳)の86%がこのように考えているようです。
- パーパスや経営理念策定の第一人者である佐宗邦威氏の整理に基づくと次の定義
- ミッション/パーパス = 組織の存在意義「私たちは何のために存在しているのか?」
ビジョン = 組織が目指す理想の状態「私たちは将来どんな景色をつくりたいか?」
ミッション/パーパスは「Why」に答える。ビジョンは「What」に答える
問い28 価値を提供するための戦略があるか?
経営戦略整理のための「7×7 Factors」フレームワーク
問い29 経営戦略と人事戦略はどのように連動しているか?(連動させるか)
7×7の要素から人事戦略の要件定義を行う
- 人事システムの導入を考えている会社のヒアリングから、「いろんなデータを管理して、いろいろ分析できる人事システムがほしい」という話がよくある
- 実現したいことが曖昧だとプロジェクトはうまくいかない
- システム導入の最大の失敗原因は「要件定義の不十分さ」
- まず行うべきは「経営戦略と人事戦略の紐づけ」
- 7×7 の要素に対して、どのように人事戦略の要件を定義する
人事戦略の要件定義を行う3つの観点
(ア)経営戦略を実現するためには、どのような意識や力を持つ人が必要か?
(イ)どのような行動が促進されると、実現されやすくなるか?
(ウ)人の調達・育成・活躍・維持(人材マネジメント)において押さえておくべき点があるか?
問い30 人的資本は戦略実現にどう貢献したか?
投資に対するリターンを3つのレベルで考える
- レベル1:「投じた人件費に呈してどの程度の利益を生んだか」を測る
- レベル2:リターン(分子)と投資(分母)を拡張して測る
- レベル3:「経営戦略実現の確からしさがどの程度高まるか」を説明できる状態をつくる