はじめに チームの行く手を阻むもの
チームに降りかかる困難を乗り越えるには
- 一寸先も見えない現代では、「個人プレイ」ではなく、「チームで成果を出す」ことがあらゆる職種で求められる
- しかし、現実には多くの「困難」がある
- ロングセラー商品の突然の不振
- 理不尽なクレーム
- ギスギスした人間関係
- コミュニケーション不全
- エースの離脱
- このような困難を解決できないうちに、次の「困難」が立ち現れる
- 目の前の困難を、場当たり的にやり過ごすだけでは、根本的な解決にはならない
- チームの「困難」を本質的に乗り越えるために、私たちは何が必要なのか?
### 不確実性が常に私たちをモヤモヤさせる - 「困難」に拍車をかけつのが、時代の「不確実性」 - 人間にとっては、「困難」の痛みそのものだけなく「不確実性」が高まった状況にも強いストレスを感じる
チームレジリエンスで困難を乗り越える
本書の目的は、不確実性の中で次々に降り注ぐ「困難」を乗り越える強いチームをつくるための処方箋を、最新の成果に基づいて提案することです。
- レジリエンスとは「回復力」「復元力」「弾性」
- ビジネスに不可欠な要素として、キャリア論、組織論で注目されている
- しかし、個人が自分の身を守るだけの「独りよがりのレジリエンス」では、目先のストレスが軽減できるだけで、困難と不確実性は低減できない
- 最初は個人に関わるものとして捉えられてきた「レジリエンス」が近年、チームが持ち発揮するものとして位置づけられてきた 本書は、レジリエントとチームレジリエンスに関する50本を超える海外の研究論文を下敷きにしながらも、誰にでも実践可能な形でチームレジリエンスを高める方法をまとめた
第1章 チームの困難と不確実性の科学
チームが乗り越えるべき「困難」とは何か
困難とは、チームを脅かす「ストレス要因」である
困難とは:個人やチームの存在価値・信念・目標達成を脅かすストレス要因のこと
突如として出現する「急性的な困難」
- 昨日までの正解が、明日には通用しないかもしれない
- ひとたび油断すれば無名のベンチャー企業にあっという間に追い抜かれるかもしれない
- これは、現代ビジネス環境における最大の困難
- 他にも、パンデミックや大地震のような自然災害や、産業事故なども、警戒すべき困難
常に身近に潜んでいる「慢性的な困難」
- 市場の動向は常に揺れ動き、生活者が熱中するトレンドも、SNSによって激しく変動
今すぐに致命的なダメージをもたらすわけではないけれど、じわじわと私たちの存在価値・信念・目標達成を脅かすストレス要因となり続ける「慢性的な困難」
チームが乗り越えるべき困難は、「急性的な困難」と「慢性的な困難」のグラデーションによって整理することができる
敵は身内にあり?チームの内部から生まれる「困難」
困難は外的なものだけでなく、内的要因もある
チーム内部の慢性的な困難はあらゆる困難の現況になるため、注意が必要
不確実性の時代が生み出すわからなさの悪循環
不確実性が「困難」の解決をよりハードにする
- VUCA時代をもう少し整理
不確実性の本質は、未来と現在の「わからなさ」にある
さらに、漠然とした閉塞感や焦燥感だけが残されたまま、いったい何が解決すべき問題なのか、その輪郭もつかめない状態
つまりどうすればうまくいくのかわからないという問題解決における根源的な悩みに帰着する
外部環境による「わからなさ」は、自分の感情に蓋をする
- 先行きが見えず、不安定で、努力しても報酬が得られるかどうかわからない外部環境に置かれ続けていると、自分たちが何がしたいのかわからないとなってしまう
慢性的な「リソース不足」が「わからなさ」の悪循環に拍車をかける
この悪循環にはまると、自分たちが「何をしたいか」だけでなく、「これはしたくない」「これは嫌だ」という後ろ向きな感情にも蓋がされ、自分の本当の欲求に対して鈍感になる
これがストレスフルな状況に対峙したときに、私たちが反射的に「犯人」を探し出して、目の前のわからなさから「逃避する」原因
自分ではない「誰か」のせいにしたくなり、各々が「犯人」を探し始める。
自分の意思と感情に向き合えなくなったチームは、互いの関係性をさらに悪化させ、内的な「困難」をさらに増幅させていく