Part2 幻想を手放す
第11章 留まることで見えてくるもの
「忍耐」や「我慢」はネガティブな響きがある。
しかし、社会が加速するにつれて事情が変わった。
忍耐が強みになる場面が増えた。
誰もが急いでいる社会では、時間をかけることのできる人が得をする。
ハーバード大学で美術史を教えるジェニファー・ロバーツ
ロバーツの最初の講義で、いつも同じ課題
「美術館に行って、絵画か彫刻をひとつ選び、3時間じっと見る」という課題だ。
焦りがちな気持ちを抑えるための忍耐は、けっして受動的アンものではない。むしろ積極的で、力強い態度だといっていい。そして忍耐は、アート鑑賞にとどまらず、あらゆる場面で力を発揮する。
筆者も同じく「ニューオーリンズの綿の商人」を3時間見続けた。
最初、とても退屈をして、時がまったく進んでいないように感じられた。80分(正確ではないが)過ぎたころ、変化が起きた。不快感が消え、それまで気づかなかったディテールをともなって立ち上がる。
現実の速度をコントロールしようという幻想を捨てたとき、現実と自分がようやく一致した。
見ることと待つこと
「わからないという不快感に耐えれば、解決策が見えてくる」ということだ。クリエイティブな仕事や人間関係の悩み、政治や子育てなど、人生のほとんどの場面に当てはまる。
- 難しい問題に直面したとき、未解決の状態に耐えられず、とにかく最速でなんとかしたいと思う。
コントロールできないという不快感を逃れるため、本質的な解決策でなくてもいにしない。
忍耐を身につける3つのルール
「問題がある」状態を楽しむ
小さな行動を着実に繰り返す
オリジナルは模倣から生まれる
1.「問題がある」状態を楽しむ
「問題」がない状態に到達できるものではないかという幻想を抱いている。
そのため、すぐ解決したくなる。
問題とは、自分が取り組むべき何かだ。取り組むべきことが何もなくなったら、人生はまったく味気ないものになるだろう。
「すべての問題を解決済みにする」という達成不可能な目標を諦めよう。そうすれば、人生とは一つひとつの問題に取り組む、それぞれに必要な時間をかけるプロセスであるという事実に気づくはずだ。
2.小さな行動を着実に繰り返す
心理学者ロバート・ボイスの研究 学者たちの執筆習慣
もっとも生産的で成功している人たちは、1日のうちに執筆に割く時間が「少ない」。
ほんの少しの量を、毎日続けていたのだ。
適切なペースをつかむためのコツは1日に割り当てた時間が終わったら、すぐに手を止めて立ち上がること
3.オリジナルは模倣から生まれる
ユニークな目的地にたどり着けるのは、人真似だと言われてもくじけずにつくりつづけ、粘り強く技術を磨き、経験を積むことのできる人だけだ。初期の試行錯誤の段階で諦めてしまうようでは、けっしてオリジナルの作品はつくれない。
まずは、立ち止まり、その場に留まってみることだ。現実を速めようとするのをやめて、現在地をゆっくりと楽しもう。
〜中略〜
かけがえのない成果を手に入れるには、たっぷりと時間をかけることが必要なのだ。