はじめに
「部下(後輩)の育成・成長に悩む管理職が増えている。
- キャリア支援で、プライベートも含めたライフ・キャリアについて、どこまで踏み込んで良いかわからない
- 1on1が大事と言われてもやり方がわからない。何を聞けばいいのかわからなくて、雑談や業務の話で終わってしまう
- 管理職候補の女性社員に昇格・昇進を打診したが、「自信がないので辞退したい」「プライベートを大事にしたいので難しい」と言われた
- 社内での雑談や飲み会が減って、業務以外の会話をすることが減った
期待していた部下(後輩)が突然やめると言い出し、どうすればいいかわからない
こうした課題の解決の一助になるのが、1on1
本書で扱っている1on1は業務の話、情報共有、進捗報告、評価面談ではない。 部下(後輩)と中長期のキャリア形成について、1対1で対話するキャリア1on1
第1章 なぜ今、キャリア1on1が必要なのか
そもそも「キャリア1on1」って何?個人面談では不十分?
- 本書で扱うのは部下や後輩の中長期的なキャリア全般にまつわるテーマ
キャリアの概念とは
キャリアとは、その人の夢や希望、ライフイベントなども含めたプライベート、大切にしている価値観などもひっくるめた「生き方」そのもの
- キャリア1on1とは、中長期的なキャリアをテーマに、部下や後輩の成長や育成を目的に、その人の能力や長所を伸ばし、活かすための対話
プライベートも含めたキャリアの話をなぜ会社でする必要があるのか?
- 将来の見通しが立ちにくい時代へ
- 生き方・働き方が変化し、伝統的なキャリア観→自律型のキャリア観へ
- 働き方の選択肢が増え、「自分はどうありたいのか」と迷う人が出てきた
キャリアに対する価値観も目まぐるしく変化し、多様化
このような背景があり、漠然とした不安やモヤモヤとした気持ちを抱えている人が増えた。
「どういうところに仕事のやりがいを感じるのか?」「この会社にいる意味は何なのか?」「大切にしていること・ものは何なのか?」<中略>といった根本的なことをしっかりと言語化し、会社で話す必要がある。
人が組織で活躍するために、「働きやすさ」「働きがい」が必要
- 働きやすさは会社の制度や環境が整ってきている会社が増えている
- 働きがいのサポートをしていくのが本書で取り扱うキャリア1on1
第2章 1on1の役割とルールを知っておこう
1on1とは「メンタリング」そのもの
「指示命令/評価対象としての関係性ではなく、経験豊かで成熟した先輩が、次世代の人に対しキャリアの発達や心理的・社会的成長を促すために実施する対話が、まさにメンタリングである」
南山大学 教授 久村恵子先生
- 優れたアスリートや芸術家、政治家にも必ずメンターがいる
- 中長期のキャリア形成について対話する1on1においてメンタリングのスキルが欠かせない
1on1に必要なメンタリングスキルは大きく3つ
- 「ディープカンバーセーション(深い対話)スキル」
- 「アドバイス(助言)スキル」
- 「クロージング」 (スキルについては3章/4章で)
メンタリングとコーチングの違い
- 「1対1の対話によって、成長を支援する手法」という点では同じ
- コーチングでは、コーチ側で何かをアドバイスするということはない。あくまで答えはコーチングを受ける、その人自身の中にある」ことが前提、コーチが自らの知見を共有する、助言をするといった概念がない。
- メンタリングでは、必要に応じて知見を共有したり、助言したりする。
1on1におけるメンターの3つの役割
①キャリア支援
②ロールモデル、もしくはパーツモデルの提示
③エンパワーメント(励まし、勇気づけ)
①キャリア支援
- キャリア支援が一番大きな役割。
- キャリアの正解がない現代において、部下や後輩の迷いや不安をなくせることが大切
- 部下や後輩が自分のキャリアを前向きに形成できたり、本人の価値観と組織の目指す方向性や取り組みが少しでも重なることが重要
②ロールモデル、もしくはパーツモデルの提示
- ロールモデルとは、考え方や行動、生き方の全般がお手本になる人物。「参考にしたい」
- パーツモデルとは、考え方や行動、生き方の一部がお手本になる人物。「部分的にでもこの人を参考にしたい」
1on1を実施する側は少なからず、「参考にしたい」「参考になる部分がある」と感じることが重要
ただい、完璧な「スーパーマン」「スーパーウーマン」である必要はない。むしろ、失敗や挫折を踏まえた等身大のあなたの経験や知見が相手の参考になることが多い
③エンパワーメント(励まし、勇気づけ)
- 上司との対話を通じて、相手が一歩踏み出したり、行動していくための勇気や自身をもてる状況をつくっていくことも1on1の役割
メンタリングの手法を使った1on1の効果
⚫︎これまでになかった視野の獲得
⚫︎課題解決の選択肢の増加
⚫︎身近なロールモデルとの対話によるキャリア展望の高まり
1on1の「基本の形」を押さえよう
- 月に1回60分、6回(半年間)
- 日常の業務から少し離れて、自分のありたい姿や現在の仕事を行う理由にしっかり向き合ってみる。あるいは、何かを抱えている課題について、表面的なことではなく本質に迫ってみるといったことをするにはまとまった時間が必要。
- 人が大きく変わるには半年以上かかる
- とはいえ、役職があがったり、異動したりと多忙な方を対象にする場合は、月に1回60分、3回でも
社内メンター制度として1on1を運用する際のステップ
大前提として、何を目的とした1on1なのかをはっきりさせる
- 例えば、すでに管理職になっている人が、さらに役員候補などの上位職にあがるのか、だれでも気軽にキャリアの悩みを相談できる窓口を作りたいのか、女性管理職のパイプを作る目的なのか、従業員のエンゲージメントを高需要させたいのかなど
目的に応じて、メンター役にふさわしい候補者を決める
- 選び方の2つのポイント
- ①できるだけいろいろなタイプの人を揃える
- ②この人だったら話を聞いてもいいなと相手が思える人柄の社員を選ぶ
最後にメンティとのマッチング
- メンティ(メンターを受ける側)がどんなテーマで、何を相談したいのか、事前に確認をして、それらについて話せそうな相談相手を組み合わせる。
- その時に大事なのは「ニーズ」と「相性」