第8章 システムの複雑性
- 人間がスマートな悪に抵抗するにはどうすればよいか
- システムそのものを拒絶すればよい、最適化されたロジスティクスを破壊し、その外部へと脱出する。
この発想は困難である上に、有効ではない。
システムの閉鎖性
- スマート化の理想的な姿は一元的な管理。
- スマート化は多様性を否定しようとするものである。
- つまりスマートなシステムは閉鎖的である。
「ラッシュアワー」への復讐
- 地下鉄サリン事件の事例による説明
もう一つの別の閉鎖性
閉鎖性を克服する開放性であると期待があった。しかし開放性ではなく、もう一つの閉鎖性であった。
- 社会の閉鎖性とオウム真理教の閉鎖性
なぜ、開放性、自由をもとめていたはずなのに、別の閉鎖性に入っていったのか。
村上春樹の解釈
- 私たちが生きている現実は、様々な情報があり、混乱している。多様な選択肢があり、何も選ぶことができない。このことは私たちにとって苦痛である。その苦痛を回避するために、わかりやすい別の現実を歓迎する。別の現実は一つの道(シンプル)だけを提示する。
システムの複数性への開かれ
- 別の現実を立ち現れることを「継続性の切断」
- 人間に力を与えるフィクションから現実への帰り道が立たれてしまっていることが問題
我々の住んでいる一般的な社会はいわば「開かれたサーキット」であるが、その社会の中にはいくつもの「閉ざされたサーキット」が並列的に存在している。
- 私たちに、重要なことはスマートなシステムそのもの否定ではなく、別のシステムへのアクセスする可能性を守ること
第9章 「ガジェット」としての生
自立共生社会の道具
- イヴァン・イリイチの主張は、テクノロジーの開発には一定の限界が設けられるべきである。その限界を超えるとテクノロジーの進歩は世界に対して、破滅的な帰結をもたらす
- テクノロジーが人間のために存在する世界。
自立共生社会とは、人間の自由を「人間的な相互依存」によって立ち現れるものとして捉え、それを基本的な価値とする社会のあり方である。
道具のカスタマイズ可能性
自立共生社会とは、人々がそれぞれのライフスタイルに合った道具を自由にカスタマイズしながら、不揃いの道具を使う人々が互いに助け合い、互いを補い合うことができる社会であろう
- 当初の目的とは異なる使い方、組み合わせで新たな性能を発揮できるそうした道具は「ガジェットgadget」
ガジェットの存在論
ガジェット・・19世紀半ば頃から使われていた。当初は、もともとの名前を忘れられていた道具を指す言葉。
ガジェットが使用されるとき、それは常にあるネットワークの中にうめこまれる。
転用可能性
ガジェットとは、潜在的に転用可能な道具であり、究極的に何らかシステムに還元されない道具として理解されうる。
ガジェットたちが歩く世界
私たちが悪への加担に抵抗するためには、私たち自らもまたガジェットとしてシステムに帰属するべきである
私たちはシステムの一部であり、システムのなかで一定の役割を担い、機能を果たしている。しかし同時にシステムにオーダーメイドされた部品ではない。
それぞれ違った形をしたガジェットが、閉鎖的なシステムの中で刺激的な発明・共創を作り出し、既存の価値を刷新していく。