第1章 「N1分析」とは何か
「マスマーケティング」の限界と誤解
マスメディアから個人メディアの時代へ
- 昭和の右肩上がりの時代には人口が増え続け顧客も増え続けていた
- その時代は、テレビ、新聞、雑誌、ラジオの4大マスメディアが主要
- マスマーケット、マス生産、マス営業、マス販売網を土台に、「不特定多数のマスのお客様」に「マスメディア」を通じて、「マスマーケティング」が主流だった
「マス」と言われるようなお客様は存在しない
多様な顧客の集団をひとくくりにした「マス」と言われるようなお客様は存在しません。
- マスマーケティングという手法の否定ではなく、平均値や最大公約数のみを求める「マス思考」が問題
- ほとんどの人がスマートフォンを持ち、インターネットに直接つながり、さまざまな情報を触れるようになった時代において、この「マス思考」から大きく転換をしなければならない
パレートの法則は利益に貢献する「ロイヤル顧客」の割合にもあてはまる
- 上位2割が全体の8割の成果を生み出している
- 100名のお客様全体を見るのではなく、20人のリピートをしてくれる方が他の80人と何が違うかを掘り下げる
目の前のお客様の人数に着目すると見誤る
中長期で貢献しているお客様と短期で貢献しているお客様では中長期のお客様を見る
そのうえで、短期のお客様との違いを見極めて、中長期の貢献をしている人にどうやったらなるのかを考える
短期的な売上を重視する傾向は、BtoBでもよく見られます。マーケティングや営業がリピートカスタマーを最も理解しているカスタマーサクセス部門と分断した状態で、新規獲得向けのリード獲得を過剰に行ったり、インサイドセールスを過度に強化するケースです。
企業経営で重視するのは、短期ではなく、継続的な売上と利益
「リピートしてくださるお客様(ロイヤル顧客)」が大事
マーケットは塊ではない。心理のある個人の集合がマーケット
顧客の心理や変化を把握しないマーケティングは縮小均衡に陥る
マーケットは1つの塊ではない
マーケティングとは、端的に言えば、プロダクトを開発し、お客様に継続的に購入や使用していただいて、利益を生み出し続ける活動
お客様がなぜプロダクトを買ってくれたのか「行動変化」の理由である「心理変化」の理解が必要
「継続的に利益をもたらす顧客」と「一過性の顧客」
- 「継続的に利益をもたらす顧客」と「一過性の顧客」を区別し、両者の違いを検証する
違いとは次のようなものです。
- 顕在ニーズ・潜在ニーズの違い
- その結果としての行動の違い
- 「ただの数字の塊(マス)」ではなく、「何がお客様の心を動かし、何がそのお客様にその行動を起こさせているのか」を洞察する習慣を普段からつけること
塊であるマーケット全体をセグメントすると、最小単位は「N1」
- アイデアを出すために、「N1」の設定が必要
- 一人に絞り込むことへの「ニッチすぎて、市場が狭くなる」、「一人に焦点をあてるとスケールしないのでは」という不安
- なぜ一人に絞り込むのか
例えば、誰かにプレゼントを贈るときの例で考えてみましょう。
次の3つの選択肢のうち最も喜んでもらえる自信があるのではどのケースでしょうか?
①あなたのお子様、パートナーのいずれか1人
②あなたの同僚10人
③4年生大学の学部を卒業し、現在、首都圏に居住する年収400万〜500万円の独身女性
マーケティングを考えるうえでも、1000人の平均値を起点にするより、「N1」を起点にしたほうが成功率が高くなる
「プロダクトに便益を感じて購入した際の重要なきっかけ」、さらに「ロイヤル顧客化した重要なきっかけが何だったのか」などをマーケターがさまざまな角度から聞き出し、深堀りして分析する
N1分析で具体的なお客様にフォーカスをあて、その1人と同じような趣味嗜好、価値観、生活態度、興味などを持つ人はどんな人なのかを探り拡大していくためのアイデアを見つけスケールしていく
最初から大勢の人が必ず買ってくれる、必ず喜んでくれるではなく、特定の1人が価値を見出すプロダクトを考える
「演繹的発想のマスマーケティング」と「帰納的発想のN1分析」の違い
演繹的方法
既存の理論や法則から特定の結論や予測を導き出すものです。
理論や仮説が先にあり、それをもとに具体的な事例を分析し、理論の正しさを検証します。
帰納的方法
具体的な個別ケースの観察から一般的な法則や理論を導く方法です。個別の事例が先にあり、それらからパターンや傾向を見出し、一般的な結論や理論を形成します。
このアプローチは、新しい理論をつくる際や未知の可能性の発見に有効です。
「N1分析」の基本ー「顧客戦略」を考える
「顧客ピラミッド」で顧客構造を理解する
- これは量的調査などを使って作成できる以下の設問を用意
①このブランドを知っているかどうか(認知)
②これまで買ったことがあるかどうか(購入)
③どれくらいの頻度で購入しているか(毎日、毎月、3ヶ月に1回、最近はかっていない・・・などの購入頻度)
「9segs」で顧客の実態を知る
さらに詳細に顧客実態を分析する場合は、「次回購入意向(NPI)」の項目を加える
N1分析では、「積極ロイヤル顧客」を最初にお話伺う
4象限をもとに便益と独自性のある「価値」をつくり続ける
- アイデアになるためには、便益と独自性の両方が必要
- そのためには、顧客が誰かを見つけられなけば、その先が運任せになる
「顧客は誰か」との問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、最も重要な問いである。やさしい問いではない。まして答えのわかりきった問いではない。しかるに、この問いに対する答えによって、企業が自らをどう定義するかがほぼ決まってくる。 (「マネジメント基本と原則』P・F・ドラッカー著/上田惇生訳/ダイヤモンド社)
- アイデアを見つけ出すために行うのが「N1分析」
「ストラテジーマップ」で顧客戦略を把握する
カスタマーダイナミクス〜顧客は常に移り変わっている〜
- マーケットは常に動き続けている
どんなにプロダクトに魅力を感じていてもいつかは離れていきます
顧客は変わり続けると認識し、定期的にお客様の声を聞き、顧客戦略を見直しを図ることが必要