本書の紹介
本書は2010年の『イシューからはじめよ』(旧版)発売以来、知的生産のバイブルとしてビジネスパーソンを中心に研究者や大学生などから幅広く支持されてきました。
優れた知的生産に共通することーはじめに
- 「圧倒的に生産性の高い人」 = 「何に答えを出すべきなのか」についてブレることなく活動に取り組むことがカギ
- それが「イシュー」
悩まない、悩んでいるヒマがあれば考える
- 「悩む」 = 「答えが出ない」という前提のもとに、「考えるフリ」をすること
- 「考える」= 「答えが出る」という前提のもとに、建設的に考えを組み立てること
- 知的生産に関わる人にとっては、悩まないで「考える」ことが大事
序章 この本の考え方ー脱「犬の道」
常識を捨てる
- イシューからはじめるために、まず最初にやることは「一般常識を捨てる」こと
- 「問題を解く」より「問題を見極める」
- 「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」
- 「知れば知るほど知恵が湧く」より「知り過ぎるとバカになる」
- 「1つひとつを速くやる」より「やることを削る」
- 「数字のケタ数にこだわる」より「答えが出せるかにこだわる」
- 上記の後半部分がこの本で紹介する「イシューから始める」考え方
バリューのある仕事と何か
ウィキペディアによる生産性とは、「経済学で、生産活動に対する生産要素(労働・資本など)の寄与度のこと。あるいは資源から付加価値を生み出す際の効率の程度のこと」
この本での生産性は「どれだけのインプット(投下した労力と時間)でどれだけのアウトプット(成果)を生み出したか」
生産性をあげるためには、「労力・時間を削る」 or (同じ時間で)「多くのアウトプットを生み出す」
「多くのアウトプット 」 = 「バリューのある仕事」
プロフェッショナルにとって、バリューのある仕事とは何か?
よくある回答として、質の高い仕事、丁寧な仕事、ほかの誰にもできない仕事など、これらは正しい面もあるが、本質は突いていない
バリューの本質は、2軸から成り立っている。「解の質」と「イシュー度」
イシューとは下図のAB両方の条件が満たすもの
「イシュー度」とは「自分の置かれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ、そして「解の質」とは「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い」
上図の右上の象限に入るものが「バリューのある仕事」
多くの人は解の質が仕事のバリューを決めると考えている。
- 横軸のイシュー度にあまり関心をもっていない
踏み込んではならない「犬の道」
- 仕事や研究をはじめた当初は誰しも左下の領域からスタートする。
- ここでやってはならないのが、「一心不乱に大量の仕事をして右上にいこうとする」こと
- 労働量によって上にいき、時計回りで右に行く「犬の道」はしない
世の中で「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは取り組む必要のある問題ではない
イシュー度の低い問題にどれだけたくさん取り組んでも解をだしても、バリューは上がらず疲弊するだけ
「解の質」も大量に出しても、仕事をはじめたばかりはおおむね低いところにある
単なる努力で右上のバリューのある仕事の領域に行けることはほぼないし、この道を歩むことは将来のリーダーとしての芽を摘む行為
本当にバリューのある仕事に近づくためには、まずは横軸の「イシュー度」を上げ、その後に縦軸の「解の質」を上げる
いきなり核となる問題に絞り込む事はできなくても、10分の1程度に絞り込むことはできる
- 絞り込んだイシューを検討・分析を繰り返し、良い仕事をして周囲から良いフィードバックを得ることではじめて人は「解の質」を学ぶことができる
- 死ぬ気で働いても仕事はできるようにならない
「正しい問題に」集中した、「正しい訓練」が成長に向けたカギとなる
「圧倒的に生産性の高い人」のアプローチ
まず、何も考えずにビジネスや研究を行うとどうなるのかを考えてみよう。
月曜日から金曜日までの5日間で、あるテーマについてまとめる必要があるとする。すると、よくこんなことが起こらないだろうか?
- 月曜・・・・やり方がわからずに途方にくれる
- 火曜...まだ途方にくれている
- 水曜·・・・ひとまず役立ちそうな情報・資料をかき集める
- 木曜••·・・・引き続きかき集める
- 金曜···・・・山のような資料に埋もれ、再び途方にくれる
- これに対して、圧倒的に生産性の高い人のアプローチ
- このサイクルを「素早く回し、何回転もさせる」これが生産性を高めるカギ
根性に逃げるな
労働時間なんでどうでもいい。価値のあるアウトプットが生まれればいいのだ。
- 時間ベースで考えるかアウトプットベースで考えるかが違いを生む
現代的な言葉では「サラリーマン」と「ビジネスパーソン」、さらには「ビジネスパーソン」と「プロフェッショナル」の違いでもある。(中略)
特定作業のための拘束時間に対して給料をもらうことを示す言葉だ。時間ベースで給料をもらうサラリーマン (中略)サラリーマンという言葉に伴う概念に「残業・ベア交渉」(中略)
ビジネスパーソンというのは、会社に雇われてはいるが、マネジメントや自分の仕事に関わる「ハンドルを握る側の人」というのが本来の意味だ。勤怠管理はあっても、本質的には労働時間ではんく、マネジメント活動と日々のビジネス活動を通じたアウトプットにコミットし、そこで評価される。
そしてプロフェッショナルは、特定の訓練に基づく体系的なスキルをもち、それをベースに特定の価値の提供にコミットし、特定の顧客から報酬を得ている人だ。
- プロフェッショナルは「どこまで変化を起こせるか」または「どこまで意味のあるアウトプットを生み出せるか」で存在意義がきまる
Column 「噛みしめる」ことを大切にしよう
「自分の頭でものを考える」 基本的な知性をもつ人が正しい訓練をすれば、これ自体はそれほど難しいことではない。
- 世の中の問題は「ロジカル・シンキング」「フレームワーク思考」などツールはあるが、それだけで決して解決しない。
- 自分で考え抜く力が必要、そしてそのためには他人からの話だけでなく一次情報をつかむ必要がある
「深い理解」にはそれなりの時間が必要
- 脳は脳が「意味がある」ことしか認知できない
- 意味があると思うかどうかは「そのようなことが意味を持つ場面にどのくらい遭遇してきたか」によって決まる。
- 情報を噛みしめる人、さまざまな意味合い、価値、重さを正しく理解できる人であることが大事
- 表面的な論理だけで「考えたフリ」をする人にはならないよう心がける